近星商事 kinseishouji

別の価値

本物と偽物

 人間の欲というものはキリがない。少しでも良いものを手に入れたいと思うし、自分自身を見た目も中身も良く見せるべく努力したり何かしらの対策を立てる。経済的にも精神的にも豊かな暮らしを得ようととにかく必死だ。

 

 そのためにも何かと求めるのが評価だ。商品一つにしてもネット上の星の数やレビューを参考にする。なんだかんだ人は数値で比較したりランク付けが好きなのだ。そして人は評価の高いものに「本物」という名の称号を与える。

 

 しかし本物があれば偽物も存在する。本物というのはその対極にある偽物が存在してこその概念であろう。質やビジュアルなど様々な点から総合的に評価が高い本物を人は求める。そして比較対象として評価の低い偽物を避けようとする。それは物だけでなく人にも当てはまるはずだ。

 

 企業はなるべく優秀な人材を獲得したがる。学校ではテストの成績だけでなく生徒の間で肩書のないなんとなくの階級が存在したりするそうだ。階級が上の生徒は堂々と真ん中を歩き、下の生徒は端で肩身の狭い思いをしながら学校生活を送る。あれだけ多くのドラマや歌の文句で「人間は数字がすべてじゃない、比較するな」みたいな主張をしておきながらも現実は真逆だ。

 

 

 

 

偽物の道

 他と比べられとにかく立場の厳しい偽物に生きる道はあるのか。しかし条件面で劣る偽物がまともに戦ったところで本物に勝ち目はない。となれば独自の路線を開拓するしかない。本物とてすべての範囲を網羅することなど不可能だ。

 

 だから偽物は本物が踏み入れていない領域をあえて狙うのだ

 

(左)3体合体「渡世人」を構成する腕時計型作品 / (中)本物の腕時計 / (右)腕時計型ペン立て

 

 

 

 

異物?

 「そもそも独自路線を進む偽物」には偽物という名はふさわしくない。本物のものまねでしかないようなまがい物はともかく本物と異なる道を行く物は「異なる物」で「異物(いもの)」と名乗るべきではなかろうか。

 

 本物とは異なる価値を持つことで「偽物」は「異物」と化す

 

 

 

 

異物の意義

 では異物の意義とは何かと言われるとここではっきりとは断言できない。しかし本物とは別の価値、つまり異なる機能や文脈をたどることで本物では得られない発想や興味を与えることはできるかもしれない。

 そしてそれが実現するならば逆説的に本物への理解をよりより深めることもできるはずだ。

 

 

 

 

異物をめざす近星商事の作品

 近星商事の作品は身近な品をモチーフにすることが多いので、ビジュアル的にはものまねと言える。そして本物とはまったく機能が異なる物体に仕立てる。しかしそれは機能と言っても日常生活に直結するような利便性はない。むしろそれとは真逆だ。日用品のようなものが合体して人型になっても生活が便利になることはない。

 でもそれでこそ本物とは対極の「異物」になりうる。普通なようで普通でない、日常のようで日常とはちょっと違う文脈をたどりながらなんてことのない日常を深める。近星商事はそんな異物作品をめざしたい。

 

5つの日用品モチーフで構成された作品「花売娘」(2017)

 

 

 

 

本物と偽物(異物)の共存 異物をめざすとはいえ結局世間は本物を求める。それは紛れもない事実だ。しかし自分自身のことに置き換えてみれば全員が本物にはなれるわけではない。そして全員が本物を手に入れることも難しいだろう。だからこそ見方を変える意味で本物だけでなくそれとは別の価値も求めていくべきではないだろうか。工夫次第で「偽物」はただの偽物ではなく本物とは別の価値を持った存在になりうる。「本物」と「偽物(異物)」がうまく共存共栄すればより豊かな社会が実現するはずだ。

 

 

 

 

 

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【近星商事】は段ボール製の小物から大きい作品まで創造して販売しています。日用品や動物をモチーフにした作品から、ロボットやペン立て等ユニークなアイテムも展開中。オリジナルポストカードや不定刊雑誌も販売中です。どこか懐かしい気持ちになり心あたたまるような個展やワークショップも開催しますのでお気軽に遊びに来てください。

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