近星商事 kinseishouji

それぞれの立場で生きる

可視化された世界

 インターネット、スマートフォンの普及により人々は以前にも増してメディア(情報)に振り回されながら日々を送っている。振り回されると一口に言ってもそれを人に例えるならば時の権力者に振り回されるのか、子供や恋人に振り回されるのかで大分ニュアンスは異なる。要するに良くも悪くも、程度の差はあれど現代人は生活の中でメディアに何かと影響を受けているということだ。

 

 かつては新聞、雑誌、ラジオ、テレビなどが主な情報源だったが、現代はそれに加えてパソコンやスマートフォンなどから膨大な情報を得ることができる。その量はインターネット普及以前とは比べ物にならない。しかもその内容は公的なものにとどまらず、一個人の日常レベルのものまで幅は広い。特に画像や動画から来る視覚情報はインパクトが強い。現代人は目の前の景色だけでなく遥か遠くの出来事までも視覚的に飛び込んでくるような可視化された世界の中にいると言っていい。

 

 

ぼやけた基準

 現代人はともすれば大量の情報に振り回されて自分を見失う。あの商品が流行ってるだのあの作品が凄いだの画面をスクロールしていると嫌でも情報が流れてくる。何よりもSNS上で自分と同世代の日々の充実ぶり(あるいは充実しているように見える)を垣間見て勝手に自身と比べてしまうのだ。

 しかし冷静に考えればそれらの情報は必ずしも自分自身の生活に直接関わるとは限らないと気付くはずだ。どれだけの情報を浴びようとも自分に関係ないと思えはスルーして有益だと思えば、自分なりに詳細を調べて役に立てれば良いのだ。

 

 ただ一番の問題は、多くの人は学校で読み書きや計算、語学、歴史等は学んできていても情報や物事を選択する術は学んでいない。選択というのは自分が何をしたいのかどうしたいのかが見えてなければやりうようもないわけで、それが習慣化されていればおのずと自己が明確になっていく。逆にそれができていなければ自分自身の立ち位置や基準が明確になっていかないという見方もできる。自分の中にある基準がぼやけているからいざ選択を迫られた時に迷いが出てしまうのだ。ぼやけた基準は容赦なく情報の選択を阻む。

 

自分の立場

 自分が今どこにいてどこを目指すのか。意外と明確な人は限られる。何よりも目指す場所という未来の話は大概は定期的に更新されていくので、その時々で微妙にあるいは大幅に舵を切る必要に迫られる。

 でもその時に原点になるのが今の自分であり、過去の自分になるのかもしれない。それは自分の立場であり他人の立場ではない。自分の立場が明確とまではいかないまでもできる限りのマイ情報が集まれば、それはこれから先の道を選択する上での判断材料にはなるはずだ。

 

それぞれの立場で生きる

 どれだけの情報にあふれようとも多くの人がそれぞれの立場で生きていけるのならば、必然的に情報の質も上がっていくはずだしそれぞれの生活の水準(経済的な要素だけでなく精神的にも)。だがそのための場所が今の時代には足りていないのが現状だろう。その場所というのは立場や状況に合わせて細かく分かれたコミュニティだ。各コミュニティは常に開かれた状態で出入りが容易であることが望ましい。無論ここでただ理想を語っているだけではどうにもならないが、まず何よりも大切なのは自分を見つめる時間なのだろう。自分自身を否定せずなるべく受け入れて前向きに生きれたらそれぞれの立場で生きる第一歩になるはずだ。

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